【デザイナー日誌】オリジナルのフォント作りに挑戦したら、名作フォントの造形美の一端に気づいた話

FUJIMIのオリジナルフォントを作っています。

こんにちは。デザイナーの白木です。
FUJIMIは、今年1月のリブランディングをきっかけに、ブランドのアイデンティティであるロゴも新しい装いに衣替えしました。

このロゴはフランス・グラフィック界の巨匠 、A.M.カッサンドルによる書体「Peignot(ペニョ)」 をベースにしたオリジナルの造形です。

FUJIMIロゴの元になった書体、peignot

 

実は現在、リブランディングでお世話になった電通のアートディレクター、八木さんのアドバイスを受けながら、「F」「U」「J」「I」「M」以外のアルファベット大文字を少しづつ作っています。

どうしてフォント?

そもそものきっかけは、この記事も掲載されているオウンドメディア「FUJIMISM」のロゴを、FUJIMIのロゴと揃いで作る必要があったことでした。
 
最初は追加で必要になった「S」だけを作ったのですが、実際に作ってみると、「S」の造形の難しいこと!
後で知ったのですが、「S」はプロのフォントデザイナーの方でも制作の最後に残してしまうほどの難関だそうです。

「S」迷走の軌跡

これは困ったと「FUJIMI」ロゴの生みの親である八木さんに相談したところ、「これを機にアルファベットを全種作ってみると良いかもしれませんね」と提案を頂きました。
今回のように追加で文字が必要になった場合、その都度作り足してしまうと、最終的に造形にバラつきが生まれてしまう可能性があるためです。
 
このご提案を頂いた時、最初に感じたのは「自分達のフォントを持ってるブランドって素敵すぎる!」という、デザイナーとして素直な感想でした。
と同時に、フォントデザインはデザインの分野の中でも特殊な職人技。もちろん経験はありません。
 
「私で作れるだろうか……」
それが2つ目の感想でした。
 
とはいえ、八木さんがサーチライトで照らして下さった「フォントを持っているブランドの姿」はあまりにも素敵で、挑戦する価値があるのは間違いないと直感。
そこから3ヶ月ほどのロングスパンのスケジュールを引き、フォントデザインの初心者が大文字全種を制作する挑戦が始まりました。

マニアックすぎる、フォントデザインの世界

上にも書いた通り、フォントデザインは深遠な世界。
ペニョという造形のベースこそあるものの、元々の性格が大雑把な私は繊細な造形に大苦戦しました。
その一例を下の項でお話できればと思います。

peignotからの変形ルール

名作書体「Avenir」の造形美に触れた話

FUJIMIブランドマニュアル内に、英字の推奨書体として記載されている「Avenir(アベニール)」。
今回のFUJIMI FONTは、このAvenirと併用されるケースも想定し、両者を並べて不自然にならないことも意識しつつ制作しています。
実は、私が造形で行き詰まった時、助けてくれたのはこのAvenirでした。

「O」の造形で行き詰まった時、助けてくれたのはAvenirだった

それは3月の終わりごろ。
私は、「O」の造形で行き詰まっていました。
細い部分が尖って見えると指摘を受け、解決方法が見つけられずにいたのです。

変形ルールに則った造形を試してみるも……

アートディレクター八木さんからの的確な朱書き
普通に楕円を二つ重ねて作っているだけなのに、なぜ先端が尖って見えてしまうんだろう?
そこで気がついたのが、Avenirの「O」の造形が普通の楕円ではないということでした。

Avenirの「O」の造形
重ねて見ると、楕円ツールで普通に作った楕円に比べ、微妙にいかり肩になっているのがわかります。
この「いかり肩」がAvenirの自然な造形の秘密であることに気がついた私は、フォントデザインの深淵な世界の一端に触れた気分になったのでした。

Avenirの「O」を造形の素材として拝借

まだまだ微調整&進行中

FUJIMI fontプロジェクトは、微修正を繰り返しながらまだまだ進行中。
完成のご報告ができるのを楽しみにしつつ、今日もポチポチとパスをこね回しております。

もう少しで完成……!?